[Y]映画「キャスト・アウェイ」〜ゆずまろん映画論
もうすぐ節目の季節がやってきますね。同時に出会いと別れの季節でもあります。
思い詰めて辛いとき、キツい失恋をしたときに見たい映画ってありますよね。
この映画は、私のそんなときの元気回復ムービーの上位に入る映画です。
【プロフィール】
原題:CAST AWAY
2000年:アメリカ
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:ウィリアム・ブロイルズJr.
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:トム・ハンクス
ヘレン・ハント
【あらすじ】
世界大手運送会社フェデックスのバリバリの管理職チャック・ノーランド(トム・ハンクス)は多忙を極め、恋人ケリー・フレアーズ(ヘレン・ハント)にプロポーズをした直後、後ろ髪を引かれる思いで 自社の貨物機に乗りこむ。
その貨物機がハリケーンに巻き込まれ、飛行コースを大きく外れて墜落してしまう。
かろうじて生き残ったチャックは無人島に辿り着く。
四方を海に囲まれた南太平洋の小島でひとりぼっちのチャック。
飛行コースを外れているため発見は困難。
手探りの過酷なサバイバル生活が始まる・・・
【感想】
ロバート・ゼメキス監督の実験的な意欲作ですね。
劇中の7割がトム・ハンクスの一人芝居で展開します。 導入部の飛行機墜落のスペクタクルシーン以外はほとんどアクションもありません。
音楽も無人島にいるときは流れません(笑)
じゃあ退屈な映画かって?
実は1度見たときは地味だな〜と思いました(笑)
しかし、観れば観るほど味わい深い映画だなって思うようになりました。
今では私の中では名作の位置にいます。
トム・ハンクスのサバイバル生活前と後を表現するため22.7キロの減量を行ったとか、バレーボールのウィルソンとの友情など、話題の部分はいろいろありますがここでは取りあげません。
なんと言っても心に響くのは主人公チャックが奇跡の生還を遂げた後のドラマです。
四年もの無人島生活のあいだ、チャックの故郷で彼はもう亡き後の存在で、墓も建てられている。
プロポーズしたばかりの恋人ケリーはチャックの生存を感じながらも周りの勧めで結婚し、既に子供もいる。
そんな中での帰国・・・
チャックは島での過酷なサバイバル生活でも、いつかケリーに会えるという希望を励みに生きてきたし、危険な海へ脱出を決意したのも恋人の元に帰りたい一心だった。
しかし、故郷に帰ってもそこに待っていたのは別れと孤独。
チャックの生還を祝う指揮の後、ケリーとの面会の場を設けてあったが、そこに表れたのはケリーの夫という皮肉・・・
しかし、ケリーはその場には来ていたが、現実を受け入れられず痛々しく取り乱す姿を窓から見送るしか無いチャック。
そのあと、深夜こっそりとケリーの家を訪ねるチャック、そこにはケリーが待っていてくれた。
ようやく二人きりで会える時間。
一番恋愛で燃え上がっているときに引き裂かれた二人は溢れんばかりの感情を抑えながら、どこかぎこちなく会話する・・・
このシーンはトム・ハンクスとヘレン・ハントの演技の真骨頂です。
結局、他愛も無い会話で帰路につくチャック。そしてをれを見送るケリー・・・が、気持ちを抑えきれずに土砂降りの中を走り出しチャックを呼び止める・・・
いや〜何度このシーンで泣かされたことか(笑)
しかし、自分の気持ちを抑えケリーを家族の元に返すチャック・・・ 男ですな〜(T_T)
この映画はココで終われば何とも救いの無い話しなんですが、ここからの後日談が私は最高に好きです。
恐らく長い休暇をもらって旅に出るチャック、助手席には新品のバレーボール(物言わぬ相棒ウィルソンと同じ物)と羽のデザインされたロゴのついた荷物。
これは、サバイバル生活で彼の生きる支えになってくれた物で、 本来の届け先に届けに行くところなんでしょう。
羽のロゴの届け先を尋ねるチャック。
これは伏線があって、この映画のオープニングに荷物を受け取りに行くシーンが映し出されます。
そのとき門のアーチには届け主夫婦の名前がアーチに彫刻されているのですが、チャックが尋ねたときはそのアーチには女性の名前しか残っていない。
つまり別れちゃったって事を意味しています(笑)
旦那の方は外国(恐らくロシア)で愛人らしき女といるシーンもちゃんと映し出されています(笑)
ドアをノックしても不在の模様。メッセージを残し来た道をもどり十字路に差し掛かったところで、地図を広げる。
ただっ広ーい平原に延びる道・・・そこに一台のトラックが通りかかり運転手の女性がチャックに興味津々で声をかける。
結構、魅力的な女性(笑)
簡単な道案内をした後、主人公の元を去る彼女のトラックの後部には
羽のロゴマークが!
それに気付く主人公。 十字路の真ん中に立ち思う・・・
「さあ。どこにいこうかな♫」
良いですね〜この開放感!全ての苦しみや悩みから解放されたような感じが最高に大好きです。
それと、羽の持つ意味も劇中に語られていて、
人生の運は、このふわりふわりと浮かぶ羽の様な物。
行く先は風しか知らないし、決してコントロールは出来ない。
気まぐれに去って行き、また気まぐれに戻ってくる・・・
ひょっしたらもう戻ってはこないかもしれない・・・
しかしまた次の新しい風が何かを運んできてくれる。
それを受け入れていくのが人生だ・・・だったらそれを楽しんで受け入れよう・・・ そんなメッセージが込められているような気がします。